2022年7月からベトナムの電子インボイスが必須化。何が変わる?

レポート

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日本ではインボイス制度が2023年10月より適用開始されますが、ベトナムでは同様の制度としてRed Invoiceがあります。更に、このRed Invoiceを電子化したE-Invoice(電子インボイス)も既に利用開始されており、電子化においては日本よりも先行しています。

このE-Invoiceですが、Decree No. 123/2020/ND-CPより2022年7月から必須となり、このタイミングで紙面版のRed Invoiceは廃止となる予定です。

本記事では、Decree No. 123/2020/ND-CPと現行規制のシステム観点からの違いに焦点を当てながら、2022年7月1日から必須となるE-Invoiceの特徴について解説します。

E-Invoice とは?

ベトナムでは税務上、仕入税額(VAT)控除・損金算入の証憑となる書類として紙面のRed Invoiceというものがあります。日本で言うと請求書に該当するものですが、GDT(General Department of Tax)が発行した番号付きの専用紙で発行する必要があります。Red Invoiceと呼ばれているのは、この専用紙が赤いことに由来しています。

E-Invoice とは、このRed Invoiceの電子版にあたるものになります。

2022年7月からはE-Invoiceが必須になる

元々E-Invoice自体は、2011年1月適用開始されたDecree No. 51/2010/ND-CPにより初めて公式のものとなり、その後もいくつか政令や通達が発行されながら内容が具体化されてきました。現状では紙版のRed Invoiceと並行して有効な形式という位置付けなので、発行業者はいずれかを選択することが可能です。2021年現在の実態としては、規模の大きい企業を中心に多くの企業が既にE-Invoiceを利用しています。

このように現状はまだ必須化されていないE-Invoiceですが、いよいよDecree No. 123/2020/ND-CPに基づき2022年7月1日より必須となります。更に当Decreee(政令)にはE-Invoiceの必須化だけではなく、現行のE-Invoiceに対する変更や今まで不明確だった要件の明確化も含まれています。

それでは、Decree No. 123/2020/ND-CPにより現在のE-Invoiceの何が変わるのでしょうか?

システムに関連する主な変更点

制度上の変更点は多々あるのですが、こちらではシステムに関連する以下3つの変更点に注目してみたいと思います。

  1. XMLデータの必須化
  2. 電子保存要件の緩和
  3. GDTへの即時データ送信

一つずつ解説していきます。

変更点1.XMLデータの必須化

特に注目しておきたいのがXML(eXtensible Markup Language)データの必須化です。

XMLが何かについてはコチラを御覧ください。

現行のE-Invoice関連規制ではXML形式によるE-Invoiceの発行が必須かどうかはグレーで、PDF形式でしか発行していない業者もいました。

しかし、Decree No. 123/2020/ND-CPではXML形式が公式のE-Invoiceフォーマットとなることが明記されているため、XMLデータの提供は必須となります。

PDFで受領したE-Invoiceをシステムに入力する際には、手入力するかOCR機能による読み取りが必要ですが、いずれも人の目による確認が必要なので入力ミスのリスクがあります。E-Invoiceが必ず予め規定された構造化データ(つまり、XMLデータ)で発行されれば、E-Invoiceを受領する側やGDTとしてもデータを受領後のデータ管理が容易になります。

2022年7月以降は、必ずXMLデータでE-Invoiceが発行されることが担保されるので、企業間取引のデジタル化やDXの後押しになることが期待されます。

変更点2.電子保存要件の緩和

各企業は発行したり、受領したE-Invoiceを電子保存する必要があります。具体的な電子保存の要件について現状は履歴保存やバックアップ対応などの規定がありますが、Decree No. 123/2020/ND-CPでは企業の業務・システム態勢に合わせた保管方法を自分たちで決めることが可能になります。(もちろん、電子保存が前提となります)

何故、電子保存に関する要件を決める必要がなくなったのでしょうか?

E-InvoiceのXMLデータには電子署名が付与されており、データの改ざんリスクがありません。更に、GDTのウェブサイトでも簡単にそのE-Invoiceが有効なものか確認することができます。

従って、当局の要請に応じて適宜、検索・印刷ができれば問題がなく、E-Invoiceを保存するために特別なシステムを用意する必要はないのです。極端な話PCで保管するという対応でも良いということなります。(もちろん、その場合突然データが消えても問題ないようにバックアップをどうするかは別途検討しておく必要はあります。)

いずれにせよ、システム予算が潤沢でない零細企業でもE-Invoiceの電子保存のために特別なシステムを導入する必要がなくなるというのがポイントになります。

変更点3.GDTへの即時データ送信

E-Invoiceを発行した企業は、そのデータをGDTへ送信・提出する必要があります。

現行規制では、半年ごとの提出で良かったのですが、Decree No. 123/2020/ND-CPでは発行後に即時データ送信することが求められます。

通常、どの企業も何らかのシステムを利用してE-Invoiceを発行することになりますが、このシステムにGDTへの即時送信する機能が必要となります。E-Invoice発行サービスを提供しているベンダーは2022年7月までにこの対応をしなければなりません。

ちなみにGDT側では受領した発行E-Invoiceのデータベースを保有しており、E-Invoiceの基本情報がわかっていればGDTのウェブサイトで照会することが可能です。これにより、受領したE-Invoiceが有効なものかどうかを確認することができます。

まとめ

最後にシステム観点から見たベトナムのE-Invoice必須化のポイントをもう一度。

  1. XMLデータの必須化
  2. 電子保存要件の緩和
  3. GDTへの即時データ送信

2022年7月から適用されるこれらの変更点は、確実に企業間取引の電子化促進を後押しすることになります。

企業間取引が電子化されると、そのデータを活用した新たなビジネスチャンスもあるでしょう。

また、日本における電子インボイス適用はまだこれからなので、ベトナムのプラクティスを逆輸入する機会もありそうです。

次の記事では、日本版インボイス制度との違いについてレポートをしてみたいと思います。


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Research on E-Invoice Regulation Decree No. 123

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