日本版インボイス制度とベトナムE-Invoice(電子インボイス)って何が違う?

レポート

ベトナムではE-Invoice(電子インボイス)が既に普及していてますが、一方、日本ではインボイス制度が2023年10月より適用開始されます。

いずれも税務上の仕入税額(VAT)控除(E-Invoiceは損金算入も)のための証憑書類という意味では目的は同じですが、どのような違いがあるのでしょうか。

この記事では、日本版インボイス制度とベトナムE-Invoice(電子インボイス)の3つの違いについて解説します。

その1.日本のインボイス制度は電子化ではない

日本のインボイス制度は仕入税額控除を行うための請求書記載要件を適格書式として定めたものです。つまり、このインボイス制度自体に紙・電子データの指定はありません。請求書の外観が適格書式に従ってさえいれば、紙でもPDFでもOKです。

それでは電子インボイスとは、何なのでしょうか?

一般的に電子インボイスというと、PDFのように単に紙面をスキャンデータ化したものではなく、XMLデータのように構造化されたデータ形式で定義されたインボイスを指します。

そういった意味では、日本の電子インボイスはインボイス制度とは別の話です。つまり、ベトナムで日本のインボイス制度と対比するとすれば、電子インボイスではなく紙のRed Invoiceということになります。

では、日本に電子インボイスは無いのでしょうか?

日本では2023年10月のインボイス制度適用開始に合わせて電子インボイスを策定すべく、電子インボイス推進協議会(EIPA)という組織が立ち上がっています。この協議会では、欧州を中心に適用されているPeppol という規格をベー スとした日本標準仕様(日本版 Peppol)を策定中です。つまり、日本の電子インボイスは、まだこれからなのです。

一方、ベトナムでは既に電子インボイスが紙のRed Invoiceと並行して使用されており、2022年7月1日から必須となる予定です。

インボイスの電子化という意味では、ベトナムが一歩進んでいるということになります。

その2.ベトナムの電子インボイスはタイムスタンプ付きの電子署名が必須

2つ目の違いは署名についてです。

日本におけるインボイスとはつまり請求書であり、法律上、請求書に対する署名は不要とされています。これはインボイス制度が適用されても変わりません。

一方、ベトナムではRed Invoiceも電子インボイスも発行側(=請求元)の署名が必須となっています。電子インボイスの場合は、タイムスタンプ付きの電子署名がこれに該当します。

実はこれが電子保存要件の違いにも影響しています。

電子インボイスに電子署名をする場合のメリットは、その電子ファイル単体で改ざんがなく、真正であること、発行者が誰であるか、を証明できるということです。従って、ベトナムでは受領した電子インボイスの保管に関してはデータとして保存することが求められているのみで、保管するシステム自体については特段の要件はありません。(正確に言うと現時点では一定要件があるのですが、2022年10月からの必須化のタイミングで無くなります。)

一方、日本のインボイス(=請求書)を電子保管する場合はどうでしょうか?

ケースとしては、紙で受領した請求書をスキャンして保管する場合と、PDF等の電子ファイルとして直接受領する場合が考えられますが、いずれも電子署名はありません。

従って、そのスキャンデータやPDFファイルがいつ発行され、その後改ざんが無いか、発行者が誰か、を電子的に確認することができません。このために、別途電子帳簿保存法という法律で受領した電子書類の保存要件が定められており、この保存要件に対応したシステムでの保管が必要となります。

整理すると、

  • ベトナムでは、発行側で電子インボイスへの電子署名対応が必要な分、受領側は特段の対応が不要。
  • 日本では、発行側では適格書式に基づいた請求書発行、受領側では電子帳簿保存法に準拠したシステムによるデータ保存が必要

ということになります。

その3.ベトナムの電子インボイスはGDTが真正性を担保してくれる

最後の違いですは、当局の関与についてです。

実は、ベトナムの電子インボイスは発行後にGDT(日本の国税庁)に対してのデータ送信が求められています。GDTでは受信したデータをデータベース化しており、電子インボイスの基本情報があればGDTのWebサイト上で誰でも発行有無を確認することができます。

日本のインボイス制度では現時点では同様の仕組みは含まれておりません。電子インボイス推進協議会にて策定中の日本版Peppol(=電子インボイス)にて、Peppolに準拠した電子的な真正性担保が実現されることになるでしょう。

ベトナムの場合、Red Invoice含めてインボイス発行に係る不正が日本と比べて多いことが、GDTへの登録が要求される主な要因になるかと思います。

まとめ

最後に、日本版インボイス制度とベトナムE-Invoice(電子インボイス)の違いをまとめておきます。

  1. 日本のインボイス制度は電子化ではない
  2. ベトナムの電子インボイスはタイムスタンプ付きの電子署名が必須
  3. ベトナムの電子インボイスはGDTが真正性を担保してくれる

インボイスの電子化という意味では、日本よりもベトナムが先行していると言えますね。

ベトナムにおける電子インボイスの全面必須化は2022年7月とまだこれからですが、企業間取引の電子化促進を活用した新たなビジネスチャンスがありそうです。


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Research on E-Invoice Regulation Decree No. 123

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